光の子どもたち in Canoa

ブラジル東北部にある小さな漁村から発信する報告日記。大自然を今に残す“カノア”における奮闘の日々をお伝えします。 『本当の豊かさってなんだろう?』キラキラ輝く子ども達の目に惹かれてやってきたこの村。『子どもが子どもらしく子ども時代を幸せに生きるためには?』という疑問を探す旅は今も続く・・・

2007年11月

df59fecc.JPG年末が近づき、
年度末が12月であるブラジルは
子ども達が進級できるかどうかの判断が下される
大切な時期でもあります。
留年制度が廃止されたブラジルでは、
基本的にすべての子ども達が進級するのですが、
基準に満たないと判断された子ども達は
大体2週間ほどの補習授業があり、
すべての授業に出席すると、
進級という事になります。

私自身はブラジルの留年制度に賛成していただけに、
廃止されてからの子どもの常態を見ると、
小学校5年生になっても
やっと自分の名前が書ける程度という子ども達がいる中、
どうしても疑問を持たずにはいられません。
留年制度があったときは
その子どもの発達あわせて
進級していく事が出来るため、
小・中学校を卒業する頃には
基本的な教育を身につけることが出来ていました。
しかし現在では
それも叶わなくなっており、
難しい状況に立たされています。

そしてエステーヴァン村の小学校分校。
本来ならば12月7日で終了式となるはずが、
教職員のストのために一ヶ月の休校期間があったため、
15日まで引き伸ばされました。
しかし、
補習授業を受ける子ども達は
その後1週間の通学、
翌週の自宅学習、
さらに一週間の通学が必要となっており、
結果的には
年末年始を挟み、
1月まで学校に通う必要があります。
さらに、
現状では25名いる生徒全員が
補習授業に参加する必要があるのです!!!

今日ある生徒が言っていました。

『今日学校行かなかったの。
だって、好きじゃないんだもん。
黒板に書いてあることも分からないし、
それをノートに写したって自習なんて出来ないし、
だったら行かない方がいいと思うの。』


子どもにとって、
果たして何が一番いいのだろうか?
頭を抱えている私です。

5e4199f5.JPG今年は人事の面で、
大きな変化があった一年でした。
特に保育園では、
子ども達に与えた影響はかなり大きく、
担任教師は変わらなかったのですが、
後期から助手が新しくなり、
そのためにクラスが落ち着くまでに
本当に時間がかかりました。
今でもまだ
“落ち着いている”
というには程遠い状態ですが、
それでも何とか、
日々を過ごしています。

この新しく入った助手。
彼女は17歳という若さで、
現在1歳の子どもがいます。
家庭も不安定で、
子どもの父親と同居したりしなかったり・・・
実家の両親の離縁もあり、
かなり複雑な状況でした。
それでも
何とか毎日通ってきて
子どもの前で悪戦苦闘。
しかし、
笑顔を見ることが少なく、
子どもの近くによれない。
どんな言葉をかけていいのか分からない・・・
自然と子ども達との距離が出来てしまい、
子ども達自身も、
その壁を心で感じていたようでした。
勉強会を開き、
学びを深めながら、
クラスの状況を把握してもらう日々。
そして今日、
来年度について話し合われたのです。
担任教師や、
私達と働く他のクラスの教師の意見を聞き、
最後に
彼女自身の言葉を聞くこととなりました。

『子どもを見てればいい。
兄弟の面倒を見てきた私にとって、
そんなの簡単だと思っていました。
でも、
ただそこにいて子どもを見るだけではいけない。
一人一人を理解する。
時間配分やカリキュラムを頭に入れる。
子どもへの言葉掛け、
接し方、
勉強
etc。。。
保育ってこんなに難しいんだと、
つくづく感じています。
来年も続けられるかと
毎日のように自分に問いかけますが、
答えは“無理”の一言。
私には到底担えないと思うようになっています。
こんなに大変だとは思いませんでした。』

保育って、
ただ単に子どもと遊んだり、
見ていればいいものではない。
子どもの動きや遊び、
そこからその子どもの状態や
発達などを観察しながら
その成長を促していく。
毎日学びの日々であり、
私達保育士の一挙手一投足が
子どもの将来に結びついていくものなのです。
最終的な決断は来週となりましたが、
共に働いていく仲間を
これからも続けて
育てていきたい。
そう心に誓う私なのでした。

01c9b930.JPG先週末、
3日間に渡り、
教員養成講座が開かれました。
公立学校の教職員も招いた今回。
果たして私達の伝えたいことはきちんと伝わるのだろうか?
受け入れてもらえるのだろうか?
不安な部分もたくさんありました。
初めのうちは
“シュタイナー教育”
という事から不信感を抱き、
参加者の中には
距離を推し量っているような顔をしている人もいました。
しかし3日間を終え、
すべてに参加した教職員からは
『昔からあること、
私達が思い出そうともしなかったような事を
今、
思い出させてくれた』
と、
感謝の言葉が述べられました。


早期教育への取り組み。
一年でも早く、
子ども達に読み書き計算を教えたい。
そんな想いが一転、
どんなに頭がよくなっても、
テストの点数が良くても、
人として、
人間として生きる力が備わっていなければ
教育とはいえないのではないか。
教師として、
自分自身を見つめ直し、
子どもの前に立つという意識を深め、
常に学び続けること。
子ども一人一人に目を向けることは確かに難しいかもしれない。
それでも、
一人一人を知っているからこそできる、
教師としての対応がある。
教育とは、
勉強を教えるだけではなく、
生き方を教えるものなのではないか。


第一回として私達が伝えたかったこと。
それを十分に
受け止めてもらえたような気がします。


追伸:
本事業は日本郵政公社ボランティア貯金より助成を頂き、
カノアで行われているものです。
(当団体『光の子どもたちの会』は協力団体として本事業を応援しています)

77701865.JPG11月1日。
『春のお祭り』
を行いました。

カノアは雨季と乾季のみ。
したがって、
四季というのを肌で感じることはとても困難です。
それでも、
この時期、
カジュー(カシューナッツの実)の木を始め、
砂丘を越えて森に行くと
いつも以上にたくさんの花々を目にすることができます。
雨季に入る前。
日本で言うと、
梅雨の前に訪れる春と同じでしょうか。

先月から保育園の部屋には花が飾られ、
子ども達と一緒に春の歌を歌い、
庭での水撒きなど、
春を感じてきていた子ども達。
そしてこの日、
皆で一緒に歌を歌い、
冠の贈呈式を経て、
ひまわりの種を植えました。
一人一人が土を暖め、
種を植えていきます。
子ども達にとっては大好きな土遊びと同じ。

“私も私も!!!”

と、
我先に土で遊びたいと
子ども達は真剣でした。

ひまわりは年末まで保育園で育て、
終了式の日に家に持ちかえります。

大きく、元気なひまわりが育ちますように・・・

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