初めて私達が保育園を設立した当時の子ども達は全部で12人。
その子ども達は18歳となり、
それぞれの人生を歩んでいます。
高校に行くことが珍しかった当時。
今では、
ほとんどの子どもが高校に通うようになりました。
そんな中、
小学校6年を何度も留年し、
その内に大麻→麻薬と手を出し、
学校に通わなくなった男の子がいました。
幼いころから
強がって見せても、
心の優しい、
とても素直な男の子でした。
ただ、
家庭に恵まれず、
いつもどこか物足りない、
愛情に飢えているところがありました。
母親は17歳のときにこの子を産み、
祖父母の家で育てました。
母親は夜な夜な出かけては、
異なる男性と関係を持っていたため、
子どもの父親が誰か、
分からずにいました。
その後この母親は、
父親の異なる子どもを7人産み、
そのうち一人は養子に出しました。
そんな家庭で育った彼。
今年初めに転機が訪れました。
あるスイス人の男性が、
約20年ぶりにこの地を訪れ、
その際に、
「もしかしたら自分の子どもではないか?」
という子どもと出会ったのです。
それがこの男の子でした。
すぐに母親と話をし、
DNA鑑定をしました。
結果は、
親子であるというものでした。
麻薬におぼれている彼と話をし、
自分と一緒に、
スイスに行くように説得しました。
父親といっても、
見ず知らずの他人。
一緒に暮らすということに同意はできなかった彼も、
今の自分の暮らしから逃げ出したい気持ちもあり、
スイスへとついていく事にしました。
そして、
先週、
この男の子はスイスから戻ってきました。
その顔を見て、
私は涙が出そうになりました。
あんなにやせ細り、
目がくぼみ、
暗い顔をしていた彼が、
12歳くらいのときの顔、
優しく、
笑顔の素敵な男の子へと変わっていたからです。
一番の変化はやはり、
くすんでいた目が輝いていたことでしょうか。
彼の父親には男の子が一人いました。
彼よりも2歳年下の兄弟と父親とのスイスでの生活。
それが、
何の違和感もなく、
とても自然だったといい、
彼はスイスで暮らすことを決意したのです。

この村から遠く離れなければ、
新しい人生を歩むことができないというのは、
とても悲しいことです。
ただ、
仲間から離れ、
一人孤独に新しい道を見つけることは
確かに困難なことでしょう。
本来なら、
この村にいながら、
新しい道を見つけて歩み出すことができるのが一番ですが、
それが難しい事はこの村に住んでいるとよく分かります。
なので、
スイスにて新たな生活を歩んでいく決意した彼を、
私は心から応援したいと思っています。
輝きを取り戻した彼を。