私たちは2013年、
JICA草の根技術協力事業として、
ライフスキルトレーニングを青少年に実施しました。
最終的には、
当時ユニセフ始動により市で創設された、
”NUCA(子どもと青少年グループ)”
という、
各公立学校の代表者が集まって作られたグループで、
月に1度、
ワークショップを開催することになりました。

日本の学校とは異なり、
公立学校にはまだ、
子どもたちが参加する委員会というものがなく、
日本でいう生徒会の機能はほとんどありません。
ただ、
条例として、
こうした生徒の意見を聞き、
学校生活をより良いものにしていく動きは認められており、
私の住むアラカチ市でも、
全公立中学校の半分ではありますが、
生徒会が発足されました。
そのため、
この生徒会の代表者が、
”NUCA”
に参加することになったのです。

2016年11月30日。
今年度最後の集まりがありました。
そこで一人の男の子が、
皆にメッセージを読みたいと立ち上がりました。
ブラジルでの青少年の基準は18歳未満。
彼は今年17歳になったことで、
このグループに参加できる時間が残りわずかであること、
自分がいなくなっても、
ぜひこのグループが存続していくこと。
そうグループ皆に語りかけました。

12月6日、
一人の青年が死体で発見されたとの報道がありました。
NUCAのグループのメンバー間で、
あの最後のメッセージを読んだ彼が亡くなった、
いや違う…
そんな混雑した情報が駆け巡り、
13時過ぎ、
彼だということが判明しました。
暴力の跡があり、
殴られ、
刺され、
道端に放置されていたのです。

今日、
12月10日に「Selo UNICEF」という、
市が指標に基づいて活動を評価され、
基準値以上であると、
表彰されるという制度の表彰式がありました。
アラカチ市は、
2002年以降14年ぶりに表彰されることになったのです。
(ちなみにセアラ州では82の市が表彰されました)
その中で、
アラカチ市のNUCAの代表が舞台に上がり、
参加者に向けてのメッセージを読み上げました。
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「暴力のない世界へ。
我が友、その笑顔をみんな忘れない」

私はそのメッセージを聞きながら、
涙が止まらなくなってしまいました。
会場のあちらこちらで、
すすり泣く声が聞こえました。
彼ら自身が書いた文章、
そこに現れていた生前の友の姿、
そして、
失われた今だからこそ、
声を上げて訴えたい。

「暴力のない世界へ…」

その気持ちが、
会場全体にさざ波のように広がっていきました。

ブラジルは今、
乳児死亡率が下がり、
しかし同時に、
10代の若者の死亡率が年々上がってきています。
そこには世の中で起こる様々な暴力が深く関わっていることは間違いありません。
彼らのこの声を無駄にしないために、
私たちにはいったい何ができるのだろうか?