私たちの保育園では、
毎週一人の子どもを選び、
その子どもの姿、体の特徴、
歩き方から振る舞い、
人との接し方や遊び方など、
細かく観察し、
その子どもについて話し合うということを、
とても大切にしています。
いつも目立つ子どもだけではなく、
全ての子どもを、
あるがままに知るということは、
日々の保育の中で重要なことだからです。

先週は「サフィーラ」という、
一人の女の子を観察し、
その子について話ました。
その子を妊娠し、
生まれるまで、
そしてその後保育園に来るまでを母親から聞き、
そういった背景についても、
話していきました。

彼女には7人の兄弟がおり、
(2人は養子に出されたため、彼女との接点はない)
曽祖父母の家で暮らしています。
兄弟全ての父親が異なり、
彼女の兄弟皆が、
曽祖父のことを「お父さん」と呼んでいます。
母親自身も生まれてすぐに祖父母に育てられたため、
母親の生まれ育った家にそのまま住んでいることになります。
母親が長男を出産したのは17歳の時。
村の伝説にもなっている話なのですが、
村を散歩している途中で陣痛が来て、
なんと、
砂の上に産み落としたのです。
その長男。
現在22歳ですがとっても元気です(笑)

一家は貧しく、
叔父叔母いとこなど、
合わせて15人以上の大家族での暮らし。
毎日の食事すらもままならないような生活をしています。
しかしこの家族。
それを感じさせないくらいとっても明るく、
温かい家庭です。

“サフィーラ”は、
とても安定していて、
素直。
笑顔がとってもかわいい女の子です。
誰とも仲良くでき、
皆から愛されています。
そして、
とても豊かな創造、想像性があり、
人から見たらただの石ころが、
彼女にかかればある家族へと変身してしまいます。
ある日、
彼女は滑り台の上で魔法使いになりました。
呪文を唱えていると、
少しずつ子ども達が集まり始め、
次第に6、7人の子ども達が、
ごっこ遊びを始めていました。
歌い、
踊り、
話し合い、
笑顔になり…
彼女は決して人に命令しません。
集まってきた子ども達がそれぞれ、
自分の役割を見つけ、
一緒に遊んでいくのです。
彼女の感性の豊かさ、
その振る舞いは、
周囲を温かくしてくれます。

彼女と同じような境遇の女の子が今、
私たちの保育園にいるのですが、
その子は情緒不安定で、
教師に甘えていたと思ったら、
突然暴力を振るいだしたりと、
とても難しい子どもです。

この二人。
どこに違いがあるのでしょうか?
大きな違いは、
その子自身をあるがままに受け入れ、
いつも抱きしめてあげているかどうか。
けんかや怒鳴り声ではなく、
笑顔の中で育っているかどうか。
母親がきちんと、
その子を見ているかどうか。
(一人の子の親は、携帯越しにしかその子を見ていません)
他にも色々とあるかもしれません。

生まれた境遇に恵まれていなくても、
こんなにも素晴らしい子どもに育ってくれる。
どちらも望まれて生まれてきたわけではないけれど、
その後の道が、
何か違っていた。
そのわずかな“何か”こそが、
サフィーラの笑顔につながっているのかもしれない。
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